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最高裁判所第一小法廷 昭和45年(オ)85号 判決 1970年9月10日

上告人

真鍋政郎

外一名

(別紙選定者目録記載五名の選定当事者)

被上告人

岡本広二

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由について。

原審の適法に確定したところによると、本訴請求にかかる貸金債権については、その消滅時効期間の経過前に、被上告人の先代岡本吉助が、外六六名と共同で上告人両名を被申立人として破産の申立をし、その審理手続上、破産原因の存在を明らかにするため、右債権の元利金の明細を記載した計算書およびその立証方法たる約束手形等を提出して、上告人らに対し権利行使の意思を表示したが、右吉助の相続人たる被上告人およびその余の選定者において、本訴を提起したのち右破産の申立を取り下げたというのであり、右認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし首肯することができる。

右のような事実関係のもとにおいては、被上告人の先代が破産手続においてした右権利行使の意思の表示は、破産の申立が申立の適法要件として申述された債権につき消滅時効の中断事由となるのと同様に、一種の裁判上の請求として、当該権利の消滅時効の進行を中断する効力を有するものというべきであり、かつ、破産の申立がのちに取り下げられた場合でも、破産手続上権利行使の意思が表示されていたことにより継続してなされていたものと見るべき催告としての効力は消滅せず、取下後六ヶ月内に他の強力な中断事由に訴えることにより、消滅時効を確定的に中断することができるものと解するのを相当とする。それゆえ、破産申立の取下前にされた本訴の提起をもつて、時効完成前にされたものと認めた原審の判断は結局正当であり、論旨は、これと異なる独自の見解に立つて原判決の違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(長部謹吾 入江俊郎 岩田誠 大隅健一郎)

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